2015年10月18日日曜日

安倍政権と筆頭ブレーンが目指す「憲法改正」。そして明言された「明治憲法復元]【草の根保守の蠢動 第17回】

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安倍政権と筆頭ブレーンが目指す「憲法改正」。そして明言された「明治憲法復元]【草の根保守の蠢動 第17回】
2015年10月17日 ハーバー・ビジネス・オンライン
<取材・文/菅野完(TwitterID:@noiehoie)>


 前回に引き続き、伊藤哲夫と彼が代表を務める「日本政策研究センター」を追いかけよう。

日本政策研究センターが開くセミナーのチラシ

 日本政策研究センターは、前回も解説した「保守革命」路線—つまり、「歴史認識」「夫婦別姓反対」「従軍慰安婦」「反ジェンダーフリー」の4点セット—を流布させるため、多数の書籍を出版/販売している。
(同センター公式サイトの書籍販売コーナー)。
また、書籍頒布の一方、「明日への選択セミナー」と称するセミナーを、頻繁に開催し、自分たちの主張を全国各地で展開している。

 8月2日、「第4回『明日への選択』首都圏セミナー」が都内某所で開催された。

日本政策研究センターの「改憲アジェンダ」

「セミナーは2部構成。まず、日本政策研究センターの小坂実研究部長が講演し、その後、同センターの岡田所長が講演しました。
参加者は100名ぐらいですかね。
講演後の質問も活発で、とにかく熱心な参加者が多いと言う印象でした。」と、セミナー参加者の一人が筆者に語ってくれた。

「セミナーはこの通りに進行しました」と、
この参加者が提供してくれたレジュメには、
「日本政策研究センター」が目指す憲法改正の内容と手順が克明に記載されていた。
レジュメのコピーをそのまま示そう。

⇒【資料】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=63228

レジュメで示された、「憲法改正のポイント」は大きく分けて以下の三つだ

1.緊急事態の追加

非常事態に際し、
「三権分立」「基本的人権」等の原則を一時無効化し、
内閣総理大臣に一種の独裁権限を与えるというもの

2.家族保護条項の追加

憲法13条の「すべての国民は、個人として尊重される」文言と、
憲法24条の「個人の尊厳」の文言を削除し、
新たに「家族保護条項」を追加するというもの

3.自衛隊の国軍化

憲法9条2項を見直し、明確に戦力の保持を認めるというもの

 ここで注目すべきは、「改正対象」の順番だろう。

 長年、改憲議論は「憲法9条」を中心に行われてきた。
しかし日本政策研究センターが提示する憲法改正リストのトップは、
緊急事態条項であり、憲法9条は一番最後に来ている。
先に紹介したセミナー参加者も
「実際、最もウエイトを置いて語られたのは、緊急事態条項の箇所でした」
とセミナー進行の様子を語ってくれた。
と、するとこの記載順は「日本政策研究センター」が想定する「憲法改正の順序」と考えて差し支えないだろう。

 そして、この考え方は、自民党内に設置された憲法改正推進本部の動きと一致する。

自民党の改憲アジェンダ

 同推進本部本部長の船田元(はじめ)衆議院議員は、今年2月26日、
9条改正等は「2回目以降が順当」と発言し、
さらに「各党の賛同を得られやすい環境権の創設や緊急事態条項の創設などから協議を進める」との見解を示している。(※1)

 つまり、日本政策研究センターの、「緊急事態条項の追加」「家族保護条項の追加」「自衛隊国軍化」という憲法改正の優先順位は、
そっくりそのまま自民党の憲法改正推進本部の認識と合致するということだ。

 安保法制の審議が終了した後、自民党及び安倍政権からは、来夏の参院選を見据え改憲についての発言がこれまで以上に増えてきていると。
例えば、憲法改正推進本部本部長代理の古屋圭司前拉致相は、つい先日
「安倍内閣の間が(憲法改正)実現の最大のチャンスだ」
と明確に発言している(※2)。
また、安倍首相本人も10月7日の記者会見で、
「時代が求める憲法の姿、国の形について国民的な議論を深めていきたい」
と改めて改憲への意欲を表明したところだ(※3)。

 このように、安倍政権/自民党は改憲に本気だ。

 そして、これまで見てきたように、改憲は、「全条丸ごと改正」ではなく、
日本政策研究センターがセミナーで示した
「緊急事態条項の追加」
「家族保護条項の追加」
「自衛隊国軍化」
という憲法改正の優先順位通りに来る可能性が極めて高い。
参院選後の来年の今頃我々は「緊急事態条項の追加の是非」についてまたぞろ国民的議論に参加しているかもしれないのだ。

「憲法改正」の先にあるもの

 と、筆者のこのような認識を、先のセミナー参加者にぶつけてみたところ
「さらにその先があるのです。
実を言うと、会場で驚くべき発言があったのです……」
との回答が帰ってきた。

 その「驚くべき発言」は、前掲のレジュメの内容通りに講演が進んだ後の質疑応答の時間に出たという。

 質疑応答コーナーになり、一人の男性が挙手し、
「日本政策研究センターの優先順位はわかったし、緊急事態条項の追加などであれば合意も得やすいとは思う。
しかし、我々は、もう何十年と、明治憲法復元のために運動してきたのだ。
今日のこの内容の話を、周りの人間にどう説明すればよいのか?」
と質問したというのだ。

 この質問に対する日本政策研究センターの回答は、
「もちろん、最終的な目標は明治憲法復元にある。
しかし、いきなり合意を得ることは難しい。
だから、合意を得やすい条項から憲法改正を積み重ねていくのだ」
という趣旨だったという。

 つまり、彼らは、憲法改正のその先に「明治憲法復元」を目指しているというのだ。

 いかに身内向けのセミナーでの発言とはいえ、
やはり「明治憲法復元を目指す」と公言することには驚きを禁じえない。

 しかし、筆者が気になったのは、日本政策研究センター側の回答ではなく、質問の内容だ。

 質問者の
「我々は、もう何十年と、明治憲法復元のために運動してきたのだ。」
という発言がとても気にかかる。

 質問者のいう「明治憲法復元のために運動してきた」という「運動」とは一体どのようなものであったのか?
そして質問者のいう「我々」とは一体誰なのか?

 この「何十年と続いてきた運動」とそれを支える「我々」こそが、「日本政策研究センター」と「日本会議」をつなぐポイントだ。

 次回はこの「ポイント」を一つずつ検証していく。ご期待願いたい。

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