2015年2月17日火曜日

民主党岡田代表の衆議院本会議代表質問 平成 27 年 2 月 16 日

衆議院本会議代表質問
平成 27 年 2 月 16 日
民主党・無所属クラブ
岡田克也

 民主党代表に新たに就任した岡田克也です。私は民主党・無所属クラ ブを代表し、安倍総理の施政方針演説に対して質問いたします。

 まず冒頭、先日のシリアにおける日本人殺害事件によって犠牲となっ たお二人に衷心より哀悼の誠を捧げるとともに、ご家族に対し心からお 悔やみを申し上げます。

質問に先立ち、民主党について一言申し上げます。
第一に、民主党の立ち位置です。

民主党は、
「生活者」
「納税者」
「消費者」
そして「働く者」の立場に立つ政党です。

第二に、民主党が目指す社会です。多様な価値観や生き方をお互い認 めつつ、互いに支え合う共生社会、これが民主党の目指す社会です。

第三に、これらを実現するために、民主党は、既得権と闘う未来志向 の改革政党でなければならないと考えています。

 私は、政治家として二十数年来変わらず、政権交代ある政治の実現を 目指してきました。自民党以外に今一つの政権を担い得る政党が必要で ある。民主党のためではなく、日本のために、民主党を再生しなければ ならない。それが私の信念です。その信念に基づき、代表として民主党 再生の先頭に立ち、全力を尽くす決意です。

 総理の施政方針演説に対しても一言感想を申し上げます。戦後以来の 大改革と総理は何度も繰り返されました。しかし私は演説を聞いていて 違和感を禁じ得ませんでした。改革には痛みが伴います。その痛みにつ いて国民に説明し、説得する、それこそがトップリーダーの役割です。 私は改革の痛みについても国民に対して正直に丁寧に説明してまいりた い。この演説でもそのことを貫きたいと思います。

 さて、まず内政について質問いたします。私が最も重要だと考える課 題は、経済成長と格差是正の両立です。また、中長期的には、財政健全 化と、人口の急激な減少に歯止めをかけることができなければ、日本の 将来はありません。いずれも、そのうち何とかなるとの先送りの政治の 結果生まれたもので、私たち政治家は大きな反省が必要です。しかし、 今からでも遅くはありません。私は、政治家の決断によって、これらの 難題を必ず乗り越えることができると確信しています。こういった問題 意識に基づいて、以下質問いたします。

【経済成長と格差是正】

 私は、持続的な経済成長のためには、思い切った成長戦略・規制改革 によって生産性を高めることが不可欠だと考えています。したがって、 いわゆるアベノミクスの3本目の矢である民間投資を喚起する成長戦略 は、私の基本的考え方と同じです。

 問題なのは、安倍政権では法人税減税や GPIF(年金積立金管理運用独 立行政法人)による株式投資など短期的に株価を上げる政策に重点が置 かれ、本質的な成長戦略には見るべき実績がないことです。

(1)そこで質問です。安倍総理は施政方針演説で、60 年ぶりの農協改 革を誇示しました。しかし、農家は今、米価の大幅下落に苦しんでいま す。一体どのようにして、先の総選挙で自民党が公約した農家の所得倍 増を実現するのでしょうか。重要なのは農家のための農政改革です。そ の道筋が全く見えません。総理に具体的な説明を求めます。

 安倍政権の経済政策の最大の問題は、成長の果実をいかに分配するか という視点が全く欠落していることです。経済のグローバル化が進展す るなかで、世界の先進国が格差拡大という困難な課題に直面しています。 日本も今や先進国の中で最も格差の大きい国の1つとなっています。

 給与所得者の内、年収 200 万円以下の人は 1120 万人で、全体の4分の 1を占めています。相対的貧困率は近年急上昇し、今や過去最悪の 16% にも達しています。特に深刻なのは子どもの貧困であり、ひとり親家庭 の子どもの貧困率は実に 50%を超え、 OECD 諸国の中で最低で国家とし て恥ずべきことです。不安定雇用が多い非正規労働者は増え続けて 2016 万人となり、雇用者全体に占める割合は 38%になっています。いずれも 深刻な事態です。

 これをしっかり変えていく。経済成長と格差是正を両立させることで、 先進国の中でも格差の小さい希望の持てる国にする。そのモデルに日本 がなる。そのための新しい経済政策を民主党が打ち出していく決意です。 (2)総理に伺います。今、私はいくつかの格差拡大を表す数字を指摘 しました。総理は、日本社会の格差が近年拡大しているという事実はお 認めになりますか。また、総理は予算委員会で、
「格差が人々にとって許 容の範囲を超えているものなのかどうかということが重要」
と答弁され ていますが、総理自身、今の格差が人々の許容範囲を超えていると判断 しているのでしょうか。それともそうではないのか。すべての議論の前 提ですから、それぞれについて、イエスかノーか、はっきりお答えくだ さい。

(3)格差是正のための具体策として、所得課税・資産課税の更なる見 直しが考えられます。現在の所得税の最高税率は、民主党政権時代の三 党合意に基づき本年1月から5%引き上げられ、45%となりました。し かし、この最高税率は課税所得 4000 万円以上のわずか約5万人が対象で す。併せて相続税も増税し、適用範囲は死亡者全体の4%から6%台に 拡大しましたが、まだ十分とは言えません。所得税のかつての最高税率 75%は極端だとしても、税による再分配機能がかなり低下していること は明らかです。所得課税・資産課税の更なる課税範囲の拡大や税率の引 き上げを検討すべきです。総理の答弁を求めます。

(4)正規雇用が減り、非正規雇用が増加したことが格差拡大の大きな 要因です。非正規雇用が急速に拡大した理由はいくつか考えられますが、 正規雇用にかかり、非正規雇用には原則発生しない企業の社会保険料負 担はその大きな要因です。90 年代以降、健康保険料などの社会保険料を 中心とする法定福利費は増加の一途をたどり、企業が正規社員に支払う 現金給与総額に対する割合は今や 15%に上っています。正規・非正規と いう働き方によって企業の負担に大きな差が生じる現在の仕組みを改め るとともに、税と社会保険の役割分担を根本から見直すことが必要です。 総理の答弁を求めます。

(5)今国会提出予定の労働者派遣法改正案や労働基準法改正案をはじ めとする雇用規制の緩和は、誤った「第3の矢」の典型です。

 私が総理の答弁を聞いていて疑問に思うのは、総理にはそもそも、労 使関係は対等ではなく、だからこそ労働法制が存在するとの基本認識が あるのかということです。そして、とりわけ未組織の非正規労働者は、 厳しい環境下で不安定な働き方を余儀なくされる人が多いということを、 総理は認識しているのでしょうか。結婚・出産を諦めなければならない 多くの若者がいるという現実を無視し、
「多様な働き方」という美辞麗句 にすり替えることは許されません。総理の答弁を求めます。

(6)日本の企業経営者は、かつては人を育てることを重視してきまし た。しかし、バブル崩壊後、人件費削減が重視され、その結果、非正規 雇用が拡大しました。今までの自民党政権下での規制緩和もその後押し をしたことは間違いありません。犠牲になったのは若者たちです。人を 大切にする経営こそが、日本全体はもちろん、個々の企業の成長にとっ ても必要であるとの認識を政府も経営者も共有すべきではないでしょう か。総理の答弁を求めます。

次に、年金制度について、格差是正の観点から伺います。

(7)今国会に提出が予定されている年金制度改革法案には、マクロ経 済スライドの強化が含まれています。マクロ経済スライドは、人口構成 の変化の中で年金制度を持続可能とするためのものであり、その必要性 については私も十分認識しています。しかし、それはあくまでも国民の 最低生活を保障するという公的年金の機能が維持されることが大前提で す。

厚生労働省が昨年公表した、かなり楽観的な前提に立った年金の将来 試算の標準的なケースでも、国民年金・基礎年金の実質的な金額は現在 より3割も低下します。総理は、国民年金・基礎年金に対してもマクロ 経済スライドを将来にわたり機械的に適用することが、年金制度の趣旨 から言って本当に妥当とお考えでしょうか。答弁を求めます。

(8)民主党政権では、厚生年金で比較的高額な年金を受給している方々 に投じられている基礎年金の税金部分を減額する、あるいは所得税の公 的年金等控除を縮減することで財源を確保し、これを低年金者の年金額 のかさ上げに充てることを検討していました。働く世代の負担能力にも 限界があるなか、比較的余裕のある高齢者による高齢者間の負担の分か ち合いが必要であり、そのことについて率直に説明し、理解を得るため の努力が求められると私は考えます。比較的余裕があるとはいえ、従来 は一律に保護すべき弱者とされてきた高齢者の一部の方々に対する年金 の削減や負担増について、総理はどうお考えでしょうか。国民に率直に 理解を求める覚悟はありますか。答弁を求めます。

 所得の少ない子育て世代の増加が、世代を超えた格差の固定化につな がる。これが格差問題の中でも最も深刻な問題です。併せて、急激な人 口減少を避けるための少子化対策としても、子ども・子育て支援策は極 めて重要です。

(9)従来、年金・医療・介護を社会保障の3事業としてきましたが、 民主党政権ではこれに子育て支援を加えて4事業とし、消費税を引き上 げて確保した財源から 7000 億円を子育て支援の充実に充てることとし ました。しかし、これでも全く不十分です。出生率の改善が顕著なフラ ンスやスウェーデンでは子育て支援を中心とする家族関係社会支出の対 GDP 比が3%、多くの先進国が2%を超えるなか、日本では現状 1.32% にとどまっています。厳しい財政事情を乗り越えて、思い切った予算の 組み替えが必要不可欠です。総理にその覚悟があるのか、答弁を求めま す。

(10)民主党政権では、所得税および住民税の年少扶養控除を廃止し、 得られた財源約 1.1 兆円を子ども手当(現・児童手当)に充てました。所 得控除は所得の多い人とっては減税のメリットが大きいですが、所得の 少ない人にとっては関係ありません。格差是正という観点からは、控除 から手当へ、更には本年 10 月から始まるマイナンバー制度を活用した給 付つき税額控除へというのは、有力な選択肢です。この点について、総 理は同意されますか。答弁を求めます。

これに関連し、現在、配偶者控除の廃止について、政府内でも議論が 行われていますが、生き方・働き方に中立な税制という観点に加えて、 子ども・子育て支援策の財源確保の重要性・緊急性を考えれば、早急に 結論を出すべきです。総理は施政方針演説の中で、配偶者控除について 言及しませんでした。どうお考えでしょうか。答弁を求めます。

【財政健全化】

(中略)

【外交・安全保障】

 次に、外交・安全保障について伺います。

まず、外交に関する私の基本的な考え方を2点申し上げます。

第一に、
「国民の理解と信頼に支えられた外交」です。国民の理解と信 頼があって初めて、力強い外交が展開できる。これは、民主党政権で私 が外務大臣の職にある間、常に考えていたことです。そのためには、情 報公開を積極的に行うことや、説明責任を尽くすことが、総理や外務大 臣には求められます。

第二に、
「開かれた国益」の実現です。短期的な「国益」ではなく、平 和で豊かな世界、平和で豊かなアジアを実現することで、平和で豊かな 日本を実現していく。

 この2つの基本的な考え方のもとで、日本外交は、日米同盟を基軸と しつつ、アジアの特に近隣諸国との関係を深め、そして、国際社会の平 和と繁栄に貢献すべきと私は考えます。

以下、具体的に質問いたします。

(14)総理は積極的平和主義を強調しています。世界やアジアの平和 のために日本が積極的に貢献することは非常に大切なことです。今まで も日本は、人道支援や途上国の国づくりへの協力、PKO 活動などを積極 的に展開してきました。他方で、武力行使や武力行使と一体となるよう な活動とは一線を画してきました。これらのことに対する国際的な評価 は非常に高いというのが、私の外務大臣としての実感です。しかし、総 理が今あえて積極的平和主義を強調するのは、自衛隊を海外でより活用 し、従来より一歩踏み込んだ後方支援活動や集団的自衛権行使を念頭に 置いているからです。果たして、それは正しい選択なのでしょうか。今 まで以上に自衛隊を海外で活用することの必要性について、総理の明確 な答弁を求めます。

(15)そもそも、昨年7月に閣議決定された新三要件は、
「我が国の存 立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆され る明白な危険がある」場合に武力行使できるとしています。総理が意味 するところは、日本の自衛のためにのみ武力行使を認めたものという主 張なのかもしれません。他方で、積極的平和主義は世界やアジアの平和 のために日本が貢献するというものです。日本の自衛と世界の平和、目 指すものが違うこの2つを1つにしているところに、積極的平和主義の 危うさがあるのです。この点について、総理の明確な答弁を求めます。

(16)自衛隊をより海外で積極的に活用すれば、当然、活動する自衛 隊員に対するリスクは高まります。国民がテロなどに巻き込まれるリス クも大きくなります。そういったことに対する国としての備え、そして、 国民の覚悟を求めることがなく、総理の思いが先走りしていることを強 く懸念しています。これらのリスクに対する総理の国民に対する説明を 求めます。

(17)次に、集団的自衛権をはじめとする安保法制について伺います。 集団的自衛権を限定容認するなどした昨年7月の閣議決定は、国民の理 解も国会での議論もないまま強行されたものです。一内閣の判断で憲法 の重要な解釈を変えたことは立憲主義に反し、憲政史上の大きな汚点と なりました。総理には、こういった認識や反省は微塵もないのでしょう か。答弁を求めます。

(18)他方で、内閣法制局長官が国会で答弁したように、我が国自身 が武力攻撃を受けていなくても、
「我が国が武力攻撃を受けた場合と同様 な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況」ということが、もし本 当にあるのなら、集団的自衛権か個別的自衛権かはともかくとして、国 民の身体・生命・財産を守るために、政府として何もしないわけにはい かないと私も考えます。しかし、それが具体的にどのような状況なのか、 全く説明がなされていません。この国会をご覧になっている国民の皆さ んにも分かるように、いくつかの具体例をお示しください。総理の答弁 を求めます。

(19)集団安全保障についても伺います。総理は昨年9月 30 日の衆議 院本会議の答弁の中で、
「憲法上、武力行使が許容されるのは、あくまで 新三要件を満たす場合に限定される。これは集団的自衛権となる場合で も、集団安全保障となる場合でも変わらない」と述べています。これは、 新三要件を満たせば、国連安保理決議に基づく集団安全保障措置に我が 国が参加し、武力を行使することが、憲法上は可能であると答弁したも のと理解してよいのでしょうか。また、今国会でそのことを可能とする 立法措置を考えているのでしょうか。総理の答弁を求めます。

【その他の重要課題】

(20)東日本大震災からの復興について、総理は、高台移転は9割、 災害公営住宅は8割の事業がスタートしていると施政方針演説で強調さ れました。しかし、現実には約9万人の皆さんが5度目の冬を仮設住宅 で迎え、いつになったら安定した生活ができるか不安のままに日々暮ら しています。とりわけ福島では、故郷に帰る目途すら立たない多くの人々 が今も苦しんでいます。耳触りのいい数字を強調するだけでなく、本当 に被災者に寄り添う気持ちが大切です。総理の答弁を求めます。
(後略)


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