2014年12月13日土曜日

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千円ぜいたくも我慢 衆院選 生活保護、最大の削減幅
 2014年12月9日 東京新聞朝刊

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/Xlsdl.do?sinfid=000026271631
厚生労働省の毎月勤労統計調査の統計表一覧、季節調整済指数及び増減率11(実質賃金 季節調整済指数及び増減率、現金給与総額(5人以上))から(1月-3月)データを抽出

 「近所の中華料理店で月一回、ラーメンと中瓶のビール一本を注文するのが楽しみ。千円ちょっとのぜいたくかな」

 七年前から生活保護を受けている中村敬(たかし)さん(51)が、人懐っこい笑顔を見せた。さいたま市西区のアパートで一人暮らしだ。

 高校卒業後、旧国鉄に入ったが民営化で解雇され、職を転々とした。三十五歳でがんが見つかった。二千万円の治療費のための多額の借金を払えず、四十四歳の時、自己破産に追い込まれた。

 「アパートに住めるだけいいけど、ぎりぎりだ」。ただでさえ切り詰めている暮らしは昨年八月、さらに厳しくなった。厚生労働省が物価下落を理由に段階的に生活扶助を引き下げ始めたのだ。

 二回目の今年四月の減額では消費税増税の開始と重なり、物価上昇分が加算されたが、来年四月の三回目の引き下げを合わせ、削減額は計六百七十億円。削減幅は過去に例のない平均6・5%。子どもが複数いる家庭では最大10%にもなる。

 中村さんの場合、昨年八月に千円減った。月に一度のささやかなぜいたくをする分に当たる。現在、毎月の生活費に充てる生活扶助が約八万一千円、家 賃に充てる住宅扶助が約四万七千円支給されている。十一月から冬季加算として約三千円が上乗せされたが、灯油代を節約してストーブは寝る前の一時間しか使 わない。

 中村さんは「少しでも困っている人を助けたい」と、貧困に苦しむ人たちの相談に乗っており、携帯電話代がかさむ。光熱費と水道代を払えば、生活扶 助の半分を超える。このため、食費は月三万円と決めている。自炊でも一日一食か二食しか取れない。毎月、手元に残るのは五千円ほど。来年四月以降、それす らも難しくなる恐れがある。

 「憲法が保障する生存権に違反していないか」。八月、中村さんら埼玉県内の三十~七十代の生活保護受給者二十五人が、国とさいたま市に引き下げの取り消しなどを求めて提訴した。同様の集団訴訟は他に千葉、愛知県などでも起こされている。

 十一月十九日、傍聴席が全て埋まったさいたま地裁の法廷に中村さんは立った。がんは今も肺、胃をむしばみ、医師からは「余命半年」と宣告された。治療は、病院側が国の未承認の新薬を使う条件で無料だが、先の見えない暮らしを続ける窮状を証言席から訴えた。

 「この裁判に勝つことができ、それまで生きられたのであれば、私は他の原告や支援者の方々と一緒に、趣味の映画観賞をしたい。それが今の私の願いです」
 中村さんのテレビは今年の夏の落雷で壊れ、修理できないままだ。
 (菊谷隆文)


<生活保護>
 憲法25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」を保障するため、1950年に生活保護法が制定され た。受給者は95年に過去最低の約88万人だったが、近年はリーマン・ショックなどの影響で増え続け、今年9月現在、約216万5000人。保護費の本年 度予算は過去最高の3・8兆円。国が75%、自治体が25%負担する。事実上、受給者の増加に予算が追いつかず、1世帯当たりの受給額は減る格好となって いる。

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