2014年6月19日木曜日

Copy:アメリカ国務省の2013年人身売買報告書(抜粋・日本に関する報告)

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2013年人身売買報告書(抜粋・日本に関する報告)
アメリカの日本大使館

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

アメリカ国務省人身売買監視対策室

2013年6月19日

日本(第2階層)

 日本は、強制労働および性目的の人身売買の被害者である男女、および性目的の人身売買の被害者である子どもの目的国、供給国、通過国である。中国、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ポーランドおよびその他のアジア諸国からの移住労働者は男女共に、時として、日本において強制労働の被害者になることがある。東アジア、東南アジア、南米、また過去にはロシアおよび中米から雇用あるいは偽装結婚のために日本にやって来た女性や子どもの中には、到着後すぐに売春を強要される者もいた。本報告書の対象期間中、日本人、特に十代の少女や、外国で生まれ、後に日本国籍を取得した日本国民の子どももまた、性目的の人身売買の被害者となった。また人身売買業者は、強制売春を目的に外国人女性を日本へ容易に入国させるために、こうした外国人女性と日本人男性との偽装結婚を引き続き利用した。日本の組織犯罪集団(ヤクザ)が、直接的にも間接的にも、日本における人身売買の一部に関与している。近年、主に日本人の小規模な人身売買業者の出現が報告されている。人身売買業者は、借金による束縛、暴力や強制送還の脅し、恐喝、被害者を支配するためのその他の精神的な威圧手段を用い、被害者の移動を厳しく制限する。強制売春の被害者は契約開始時点で借金を負っている場合があり、ほとんどの被害者はさらに、生活費、医療費、その他の必要経費を雇用主に支払うよう要求され、容易に債務奴隷とされる状態に置かれた。また素行の悪さを理由として「罰金」が被害者の当初の借金に加算された。売春宿の運営者によるこうした借金の計算方法は不透明であった。「援助交際」という現象が、日本人の子どもに対する児童買春を引き続き助長している。非政府組織(NGO)は、巧妙かつ組織的なネットワークが、弱い立場にある日本人の女性や少女を標的に、偽りの親近感を生み出して、こうした女性や少女を売春に誘いこむと報告する。日本は、人身売買の状況に置かれている人が東アジアから北米へ移動する際の通過国でもある。日本人男性は依然として、東南アジア、および程度は低いものの、モンゴルにおける児童買春ツアーの需要の大きな源泉となっている。

 日本政府は、政府が運営する技能実習制度(TTIP)における強制労働の存在について、実務と政策のいずれを通じても対処しなかった。この制度は当初、外国人労働者の基本的な産業上の技能・技術を育成することを目的としていたが、むしろ臨時労働者事業となった。技能実習生の大半は中国人であり、中には職を得るために最高でおよそ5000ドル相当額を支払い、実習を切り上げようとした場合には、何千ドルもに相当する金銭の没収を義務付ける搾取的な契約の下で雇用されている者もいる。手数料、保証金、および「罰則」契約は、2010年以降、禁止されているが、引き続き報告されており、脱出や外部との連絡を防ぐために、技能実習生のパスポートや他の渡航書類を取り上げ、技能実習生の行動を制限する企業もあった。

 日本政府は、人身売買撲滅のための最低基準を十分に満たしていないが、満たすべく著しく努力している。本報告書の対象期間中の限定的な法執行の前進にもかかわらず、日本政府は、過去4年間にわたり本報告書が勧告してきた、人身売買関連の訴追を推進する上での大きな空白を補うことになる法の整備と制定を行わなかった。日本政府はまた、人身売買に特化した支援措置も策定せず、代わりに、不十分な、都道府県が運営する配偶者による暴力の被害者用シェルターに引き続き依存した。TTIPは依然として、参加者を悪用から保護するための効果的な監視または手段を欠いていた。いくつかの改革にもかかわらず、オブザーバーは、技能実習生の採用方法や労働条件に変化が見られないと報告している。TTIPにおける労働搾取目的の人身売買の報告があったにもかかわらず、政府が訴追、または有罪にした強制労働の加害者は1人もいなかった。認知された被害者の人数、特に外国人の人身売買被害者の数は減少し、強制労働または強制売春のいずれについても男性の被害者で認知された者は1人もいなかった。

日本への勧告:
2000年に採択された国連人身売買議定書に加盟する。あらゆる形態の人身売買を禁止する包括的な人身売買対策法案の起草と法の制定を行う。強制労働の事案を捜査、訴追し、懲役刑を科して犯罪者を処罰する取り組みを大幅に強化する。TTIPにおける強制労働の一因となる保証金、罰則の合意、パスポートの取り上げ、その他の行為の禁止の実施を強化するとともに、説明責任を担保するための監視制度を確立する。第一線にいる担当官が、強制労働または売春の状況に置かれた男女両方の被害者を認知し、人身売買されたことに直接起因する違法行為を犯したことで、被害者が拘束されることのないように徹底するための正式な被害者認知手続きを拡大、実施する。児童買春ツアーに関与する日本人の捜査、訴追、処罰を積極的に行う。

訴追

 本報告書の対象期間中に日本政府が示した法執行への取り組みの強化は、限定的であった。2004年に改正された日本の刑法は「人身売買」を禁止するのみで、国際的な基準に適合しない過度に狭い定義となっている。この結果、検察官は人身売買という犯罪の全ての要素を網羅していない法律に基づいて訴追しなければならない。刑法第226条および227条、ならびに売春防止法などの、こうした法律は、1年から10年の懲役刑という刑罰を規定している。これは十分に厳格であり、強姦罪のような他の重罪に対して規定されている刑罰とおおむね同等である。本報告書の対象期間中、人身売買罪規定法に基づく訴追または有罪判決の報告は政府からなかった。2012年に政府は、人身売買に関連する犯罪を44件捜査したと報告した。訴追の結果、30人が有罪判決を受けたが、人身売買罪規定法でない法律に基づいた有罪判決であることから、そのうちいずれかの有罪判決で人身売買の犯罪の要素の存在が証明されたかどうかは不明である。有罪判決を受けた30人の被告人のうち、懲役刑に服したのはわずか2人であり、6人の被告が罰金刑を受けた。2013年1月、警視庁は、TTIPにおける強制労働の申し立てに関連し、出入国管理及び難民認定法違反で3人の個人を捜査した。この事案は本報告書の対象期間の末時点で裁判所において係争中である。政府は本報告書の対象期間中に695人の個人を児童買春の容疑で捜査し、このうち579件について起訴した。警察は471人の児童買春の被害者を認知した。

 警察庁、法務省、入国管理局および検察庁は、各都道府県の警察本部および地方の警察署の上級捜査官および警察官、検察官、裁判官および入国管理官を対象に、人身売買被害者の認知および人身売買事案の捜査についての人身売買対策研修を引き続き実施した。本報告書の対象期間中、人身売買関連の共犯を理由とする政府職員に対する捜査、訴追、有罪判決、または懲役刑の申し渡しの報告は政府からなかった。

保護

 日本政府は、過度に狭い人身売買の定義による制約を受け、本報告書の対象期間中、被害者を保護する取り組みについては従来通りの最低限を維持した。TTIPで借金による束縛、パスポートの取り上げ、および拘束が行われていたことを示す十分な証拠があるにもかかわらず、政府は同制度における強制労働の被害者を1人も認知していない。2012年に認知された性目的の人身売買の成人女性被害者はわずか27人で、2011年の45人から減少した。この27人のうち、11人が日本人で、それ以外は外国人であった。政府は、婦人相談所への一般的な資金提供を継続した。婦人相談所は、配偶者による暴力を受けた日本人被害者を保護しているが、本報告書の対象期間中、17人の外国人の人身売買被害者にも保護支援サービスを提供した。婦人相談所で保護されている日本人被害者は、医療費が全額支給され、精神的ケアも受けているが、外国人被害者の場合は医療費の一部を受け取るのみである。2009年の行動計画は男性被害者に対する保護政策を求めているが、日本には男性被害者専用のシェルターも、明確に男性被害者向けといえる保護手段もない。強制労働の被害者またはTTIPで虐待を受けた実習生に対する支援は報告されなかった。逮捕または拘束された後に、法執行機関により無事に認知された被害者もいたものの、認知された人身売買被害者が利用できる保護サービスが不足しているという認識があるため、政府の援助を求めることに消極的な被害者もいた。政府が出資する日本司法支援センター(法テラス)は、刑事および民事のいずれの訴訟でも、困窮した犯罪被害者に無料で法的支援を提供したが、このようなサービスの利用を申請した人身売買被害者の有無については不明だった。被害者は、人身売買業者の捜査と訴追への参加が奨励されたが、こうした手続きの間の就労は許可されなかった。被害者は、別の在留資格を所持していない限り、捜査および訴追期間中に就労できないため、わずか27人の被害者が警察に限定的な協力をしたのみで、ほとんどの被害者は、裁判開始前に本国への帰国を選択した。母国への帰国を恐れる人身売買被害者と見なされる場合、法律上、長期間の在留許可を受けることができるが、報告対象期間においてこのような許可を受けた人身売買被害者はいなかった。

防止

 日本政府は、本報告書の対象期間中、ささやかではあるが、人身売買を防止する努力を示した。本報告書の対象期間中、政府は東南アジアの数カ国との間で人身売買防止に関する覚書の交渉を行った。その結果、日本における日本人およびタイ人の人身売買犯罪者の逮捕につながったタイとの協力を含め、協力関係が強化された。警察庁および入国管理局は、多言語対応の緊急時連絡体制に関する情報を更新し、ホットラインの電話番号を掲載した資料を各地の入国管理事務所および人身売買被害者の送出国政府に配布するとともに、人身売買に対する意識向上のため、オンライン・キャンペーンを実施し、人身売買犯罪の逮捕状況について公表した。外務省は、既存の領事研修に、人身売買カリキュラムを追加した。政府は、TTIPの雇用主への働きかけ、およびTTIP参加企業に対する入国審査官および労働監督官による調査を強化し、契約書に保証金や「罰則」条項が含まれていないことを確認するため、より厳密な審査が行えるよう、全ての契約書の写しの提出を義務付けたと報告した。オブザーバーは、こうした取り組みにより、むしろ、制度を回避するためのブローカーの層がもうひとつ増えたと報告した。商業目的の性交渉の需要を減少させる取り組みとして、内閣府は、性サービスの潜在的な消費者へ向けた警告メッセージを記載した3万3000部のポスターと5万4000部のリーフレットを全国で配布した。日本人男性は他のアジア諸国、特にタイ、インドネシア、カンボジア、フィリピン、および程度は低いものの、モンゴルへ渡航し、子どもの商業的性的搾取に関与しており、日本は、児童買収ツアーの需要の源泉となっている。児童売春ツアーの潜在的な犯罪者に対する政府による捜査や訴追はなかった。日本は、国連で 2000年に採択された人身売買議定書を締結していない唯一のG8参加国である。

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